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大林組の「LOOP50」建設構想は50年かけて循環する巨大木造コンパクトシティ


大林組プロジェクトチームが発表した森林と共に生きる街「LOOP50」建設構想が興味深いです。「LOOP50」は、日本の豊かな森林資源を最大限に有効利用し、持続可能性と魅力ある暮らしを両立する中山間地域の純木造大規模建築を中心とした街の建築構想提案です。

日本では戦後、復興事業などで木材需要が急増し木を伐採し過ぎ、禿山が目立つようになりました。植林により人工林の増大を図ったものの、その成長を待つ間に外材の輸入を始めたため国産材の需要が低下。林業は衰退し森林は十分な手入れがされず、現在では、広大ながら荒廃が目立つ森林が放置されることになりました。

森の成長量に合わせて木を活用し、植栽→伐採→活用、という循環を適切に行うことで、豊かな森林を保ったまま木の恩恵を受け続けることはできないものか、木を積極的に使うことで林業家の役割を見出すことはできないか、と考えたのが「LOOP50」の出発点です。

【出展元】
森林と共に生きる街「LOOP50」建設構想


 

森林資源によるエネルギー循環


大量の森林資源を利用する用途としては、大量の材を使用する建築物が有効です。所有する木の成長に合わせて伐採し、伐採した木材量に応じた街の建物をつくります。一方エネルギー源としては、建物として役割を終えた廃材や製材時に出る端材、森林から排出する間伐材、木皮などを利用します。エネルギー収支のシミュレーションを行った結果、「LOOP50」では、50年かけて成長した木を使って毎年1区画を増築。同時に50年が経過し住居としての役目を終えた1区画は解体し、街のエネルギー源として活用する事としました。

 

 

 

純粋木造の高さ120mのループ状の居住建物(ループ棟)とスパン100mのドーム型のエネルギーセンター

「LOOP50」は、純木造の大規模建築を中心とした街の建築構想で、街の中核となる「ループ棟」は、いくつかの区画に分かれた木造建築が楕円形に集合した巨大構造体で、直径が650m~800m、高さは80m~120mに達します。森林資源を効率的に活用するために住宅や公共施設などを1ヵ所に集約。この建物を森林に囲まれた中山間地域に建設し、約1万5000人、5500世帯が暮らす街とする構想です。

 

ループ棟の用途と床面積

オフィス:111.650㎡
商業:95,700㎡ホテル19,140㎡
学校:63,800㎡
病院:19,140㎡
住宅:440,000㎡
—————————-
合計:749,430㎡

 

 

毎年ループ棟の3ヵ所あるスリット(開口部)のどこかで常に増築・解体が行われ、建物の新陳代謝が図られます。ループ棟の象徴的存在の心柱を建てる際には「立柱式」、解体する際には、エネルギー棟まで運ぶ「倒柱式」が住民参加で街をあげて行われ、森の恵みに感謝する機会となります。また、街の象徴となっているバイオマスプラントと製材・加工所が入るエネルギーセンターは、「LOOP50」が木資源で成り立っていることを住民にあらためて意識させる存在です。木が生活になくてはならない存在になることで、林業家の活躍の場が広がります。

 

LOOP50は持続可能な究極のコンパクトシティ


LOOP50は50年かけて成長した木を使って毎年1区画を増築し、50年が経過し住居として役目を終えた1区画を解体し、街のエネルギー源として活用する構想です。木を最大限に生かした建築の在り方を考えるうちに、森林資源を建築部材として活用するだけにとどまらず、廃材や端材をエネルギー源として再利用し、建物周辺の森林を50年かけて育てる循環社会のアイデアにたどり着いた、との事。森の成長と街の維持が調和したLOOP50は面白い発想だと思いました。

6 COMMENTS

ハコモノ行政

木造住宅自体は今もガンガン建ってますし、国産材が使われない原因は価格です。このプロジェクトなら製材コストが外国産以下まで下がるのでしょうか?もしそうなら、その国産木材で普通の木造住宅を建てる方がいいのでは?下がらないのなら、採算を度外視した国産木材庁舎の超巨大版ですね。

バブルの頃から続く恒例の「新年の夢」に突っ込むのも野暮ですが…

大隅

現実的な実現性や問題解決能力を度外視した夢のような、それこそマンガみたいな構想ですし、道楽でもない限りこのまま実現することはないでしょう。
しかし大事なのは実現性ではなく、これを通して提案者が伝えようとしたコンセプトだと思います。私はこれを「もっと森林資源を無駄なく使いながら、街を挙げてもっと徹底した循環型社会をつくろう」ということだと読み取りましたが、皆さまはどうお考えですか?
提案されたことの本質はどちらかというと建築ではなく都市計画の範疇にあると思います。全国的にコンパクトシティをつくろうという取り組みは見られるようになってきましたが、まだまだ課題も多く模索中という状況です。この提案にそうした現状へのヒントがあるかもしれません。

ちくりん

人口減少、地方の衰退、巨大地震や気候変動による災害の増加や農作物の被害など、今までの日本の住み方では通用しない時代が来ている事に、何故本気で取り組まないのかと思っています。このプロジェクトを少し前の新建築で見た時に、これからの日本の地方の在り方だと思いました。確かに巨大過ぎるかも知れませんが、人口が2万人以下の町村に作れば生活や医療、介護や仕事、教育も充足すると思いますし、自然災害にも安心して暮らせる街が出来ると思います。
「おらが町」の気持ちは分かりますが、東北の復興の様子を見て本当にバラマキ再建で良かったのか疑問に思います。南海トラフで広範囲に被害が及んだ時、同様の復興は難しいと思います。
高知、徳島、和歌山、三重等の地域でこれが出来れば地震被害や復興に役立つ様に思います。
都心の再開発にワクワクする気持ちもありますが、全国どこもかしこも居住スペースの小さな高層マンション、働き手が不足のホテルやショッピングモールばかり増えている現在、小さな場所で声をあげても無駄なのは分かっていますが、代わり映えのしない選挙の後、ついコメントしてしまいました。(すいません。このブログが小さいな場所とは思っていませんで悪しからず)

某京都府民

大胆な発想には大歓迎ですが、これで本当に持続可能性のある施設にできるのか、にわかには信じがたいですね…。環境保全や実用性の面から考えて、ここまで巨大にする必要があるのか。都心のように人が多く訪れる場所でなければ、あまり見た目のすごさに拘っても仕方ないように思いますし。

三刀流

ブリューゲルの名画「バベル」のような予想図ですね。
こんなのが関西にできたらいいと思います。

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