クボタとNVIDIAは、農業機械の自動運転分野での戦略的パートナーシップを結んだと発表しました。クボタはNVIDIAと連携して「エッジAI」の技術を高めてきましたが、今回の戦略的パートナーシップ締結により連携を強化し、さらなる開発のスピードアップを図ります。
日本の農業は高齢化に伴う離農が進む一方で、農作業の委託、経営効率化のための農地集積などにより、営農規模の拡大が進み、大規模プロ農家が抱える人手不足や作業効率の向上、省力化などの課題解決のため、スマート農業の活用が急務になっています。
クボタは農業が抱える問題解決に向け、国内農機メーカーに先駆けて、GPSを活用した有人監視下での無人運転が可能なトラクタを発売するなど自動運転農機の開発を進めてきました。
今後さらに、天候や生育状況などのデータから適切な農作業を判断し、適時に実行に移すことまでできる次世代の完全無人農機を実現すべく研究を進める方針です。
【出展元】
→「より良い農業×より良い社会」の実現を目指すクボタの挑戦
→NVIDIAとの戦略的パートナーシップにより、農業のスマート化を加速~農業機械の自動運転に欠かせない車載型AI技術~
→クボタ、NVIDIA のエンドツーエンド AIプラットフォームを活用し、農業のスマート化を加速
エッジAIとは?
プレスリリースを見ても良く解らない用語が多いと思いますので、少しかみ砕いて説明して行きます。
まず、エッジAIとは、エッジ(端)に搭載されているAIを意味します。エッジとは車やIoTデバイスなどに代表される端末(エッジデバイス)のことです。現在、GAFAなどが展開するAIプラットフォームは、そのほとんどがクラウドによって提供されています。クラウドAIではIoTでセンサーが取得したデータをネットワークを介してクラウド側に送り、AIが処理を行い、結果を再びエッジ側にリターンする流れですが、そのプロセスで必ずタイムラグが発生します。5Gの登場などによって通信遅延は従来よりも大幅に抑えられますが、それでも数ミリ秒単位の遅れはあり、完全とはいえません。車の自動運転などの分野では、限りなくリアルタイムに近い高速応答性が求められます。AIが学習しながら推論や解析をし、反応するという一連の処理が少しでも遅れれば、そのことが致命的な結果を生むようなシーンも考えられます。通信回線のトラブルによる切断も考えられます。
特にミッションクリティカルなシステムが求められる自動運転分野では遅延の無い「エッジAI」の活用が必須となります。「現場の近く」で活躍するエッジAIは、クラウドAIと役割分担することでより幅広い需要に応えることができます。
無人農機の実現には「エッジAI」が必須
次世代型無人農機の実現には、周囲の状況を正確に把握する「目」と、瞬時かつ高度に次の動作を判断する知能化が必要になり、それには車載型で遅延の無い「エッジAI」での画像認識が不可欠です。天候や生育状況などのデータから適切な農作業を判断し、これまで実現できていない作物の収穫などの作業まで適時に実行に移す完全無人農機の実現に向けて、NVIDIAのエッジデバイス向けの組み込みAIプラットフォーム『NVIDIA Jetson』を活用して研究開発が進められます。
『NVIDIA Jetson』とディープラーニング『NVIDIA DGX』
NVIDIA Jetson は、組込み AIエッジ システムにおけるGPU並列高速処理のためのAIコンピューティング プラットフォームです。産業向けのNVIDIA Jetsonは高い計算処理能力、精度、電力効率に優れ、高耐久設計のため、農業機械の過酷な環境に求められる要件を満たしています。さらにエッジ側では、高精細なスクリーンスティッチングやエッジ検出において、リアルタイムでスムーズな処理が求められるため、最適であるとクボタに評価されました。
また、NVIDIAが提供するAI開発におけるディープラーニングのプラットフォーム『NVIDIA DGX システム』で農機に搭載された多数のカメラから入力される情報を解析し、AIモデルの学習を重ね、その結果をNVIDIA Jetsonに戻すことでモデルの精度を高めていくことができます。クボタはNVIDIAが提供するエンドツーエンド AIプラットフォームを学習から推論(エッジ)まで導入し、開発を効率化することで市場投入の短期化を図ります。
現在、クボタは日本において従来型農機の自動化・無人化を推進中ですが、今後は、次世代の完全無人農機の実現を目指すとともに、海外展開や作物展開を推進していく予定です。
このニュースのまとめ
1)クボタは農業が抱える問題解決に向けてIoTやAIを活用したスマート農業の実現を目指している
2)天候や生育状況などのデータから適切な農作業を判断し、適時に実行に移す完全無人農機を実現させたい
3)その為には車載型で遅延の無い「エッジAI」での画像認識が不可欠
4)「エッジAI」を実用化する為に、AIエッジ システムとディープラーニングの両方を提供しているNVIDIAと提携した