2025年、統合型リゾート(IR)政策は新たな岐路に立たされています。北海道新聞の報道によれば、日本政府は2025年中にも新たな区域選定のプロセスを開始し、2027年末までに最大2カ所のIR区域を追加認定する方針を固めました。東京や北海道(苫小牧市など)が関心を示すなかで、制度の設計そのものが都市間格差を拡大させる懸念も高まっています。
経済成長の起爆剤として期待されるIRですが、その裏では地方都市にとってあまりに過酷な要件が課されており、制度の「都市偏重性」が再び問われ始めています。大阪IRから次なる展開へ──空白を埋める再選定の動き
2023年4月14日、日本政府は大阪府・市が申請した夢洲でのIR区域整備計画を正式に認定しました。これにより日本初のIRが2030年秋に開業予定となり、2025年4月24日に起工式が執り行われ、ついに建設工事が始まりました。一方、和歌山県と長崎県による申請は財務面などで認定に至らず、制度上の上限である3区域のうち、現在も2枠が空白のままとなっています。政府はこの空白を埋めるべく、2024年11月に観光庁が自治体への意向調査を実施。東京と北海道が関心を示していることが明らかとなりました。
政府のスケジュール案では2025年に新たな選定プロセスを開始し、2027年末までに最大2カ所を追加認定する見通しです。ただし、開業には7年程度を要するため、仮に2027年末に認定された場合でも開業は2035年以降が想定されます。
規模も要件も“世界最高水準”──地方創生に冷たい制度
ヒルトン最上級「コンラッド大阪」の客室:筆者撮影
政府はIRの制度設計にあたって、「世界最高水準の規制とスケールの両立」を掲げています。実際、2019年に閣議決定されたIR整備法施行令では、各施設に対して極めて厳格かつ巨大な要件が定められました。- ホテル:客室総床面積10万㎡以上
これは1室あたり50㎡換算で約2,000室相当。参考として、コンラッド大阪(標準客室面積50㎡)は164室です。地方都市にこの水準のホテルを整備するには、単純計算でコンラッド大阪級の施設を12棟以上建設する必要があります。 - MICE施設:国際会議場と展示場の併設が必須
会議場の収容人数が6,000人以上である場合、展示場の面積は最低でも2万㎡とされ、これに満たない場合でも段階的に基準が設定されています。会議・展示機能の両立が求められ、実質的には大都市でなければ整備が困難です。国内最大級の会議場(東京国際フォーラム、パシフィコ横浜)でも約5,000人収容であり、基準値を満たす施設は現状ほぼ存在しません。 - カジノ:IR全体の延床面積の3%未満に制限
しかし、こうしたスケールの大きさは裏を返せば、地方都市にとっては“実現不可能な理想”でもあります。
地方にとっての“制度的敗北”──都市集中への道筋
出展:Caesars
制度上、IRはPPP(官民連携)を前提とするはずですが、実際には国が一方的に定めた基準に従わざるを得ず、柔軟性はほとんどありません。その結果、初期投資の負担や集客予測の困難さが障壁となり、地方都市はほぼ手も足も出せない状況です。初回のIR区域認定のときは、運営者側の裁量余地が少なく、「採算に合わない」として撤退する海外企業が相次ぎました。制度上の要件を満たせる都市は、インフラ・宿泊施設・国際会議場などがすでに揃っている東京圏に限られつつあります。東京は外資系高級ホテルの集積、国際線が就航する羽田・成田空港、そして既存のMICE施設(東京国際フォーラムやビッグサイト)といった面で、他都市に比べ圧倒的なアドバンテージを有しているのは事実です。つまり、このままでは地方創生の名のもとに設計されたIR制度が、逆に“東京一極集中”を助長する制度に転化する可能性があるのです。
IRは単なるカジノではなく、国際会議・展示・宿泊・日本文化の発信を含む「都市機能の再編成」です。しかし現状の制度は、その理想を支えるには硬直的すぎます。
地方にIRを誘致するには、以下のような制度改革が必要です:
- 各種施設要件の段階的緩和(都市規模に応じた基準設定)
- 公的支援(助成・税制措置・インフラ整備)の拡充
- 民間事業者の裁量を尊重したPPP型制度への見直し
- 地方特性に即した観光・医療・文化機能の選択制導入
大阪が苛烈な批判を浴びながらも、先陣を切ってファーストペンギンとしてIR着工にこぎつけた一方で、東京が目立った招致活動を経ずに「当然」のように選定されるようなことがあれば、地方の努力に対する不公平感が強まりかねません。制度の公平性と、各地域の挑戦に応える仕組みの再構築が、今こそ求められています。
出典一覧
- 北海道新聞「IR再選定、2025年開始へ 北海道・東京などが関心」
- 内閣府「IR整備法施行令」閣議決定内容
- Bloomberg Japan「IR整備法施行令を閣議決定、施設要件を明文化」
- シンガポール国家カジノ規制庁「Problem Gambling in Singapore」
TV報道でGW中盤で「それでは全国の行楽地を見てみましょう。」で高尾山/国営ひたち海浜公園/山中湖花の都公園/箱根の大涌谷。。。。全国の意味って?何のために全国ネットワークあるの?
で、大阪関西万博は朝の入場ゲートに並んでいるだけのワンカットのみ。
(もちろん在版局は見どころなどをイロイロと紹介しています)
挙句には「万博遠いし、行くには時間とお金が掛かり過ぎるぅ~」だと。
どの口がいっとんねん!!!と思いますよ。ほんとに。
国際イベント万博も思っている以上にマスコミ(SNS)も政争の具として扱われ過ぎですね。
(大阪人気政党に議席奪われこれ以上の拡大を阻止すべく、とにかく入場者減らして失敗に終われせたい?)
世界の富裕層はIRに長期滞在し、そこを拠点に日本全国を観光します。
東京にもIRができたら、交通網の最大拠点になっている東京に集中し、大阪IRに富裕層は立ち寄らなくなる。
東京集中をさらにひどくする首都圏IRには断固反対です。
といいますか、鈴木道知事(令和5年)、小池都知事(令和6年)の当選時に統合型リゾートを誘致するって公約に掲げていないですよね?現時点で両者とも誘致する資格ないでしょうに。特に後者は次の選挙は令和10年だから間に合わないはずでは?
私は円通貨から再三、独立すべきだと申し上げております。
円通貨を排除することで秩序を変えなければなりません。
国から万博のように投資される時はよいですが、このままでは投資決定権を差配できる東京に大阪やその他地方は殺されるだけなのです。
今やサプライチェーンは海を越える時代です。
本来であれば、EUのようにアジアにも共通通貨があっていい
しかしそれは日本に米軍がいるので出来ないという幻想を抱いておりますが、国たる東京は必要以上に中国を敵視しています、地方がEUのような共通通貨を望めないようにしている為です。私はこの流れとしてアジア共通通貨が芽生えると思っております。その発想をさせないように東京政府は動いております。
いいですか、ドイツには米軍がおりながらユーロが機能しているのです。アジアもそうであるべきです。
神戸はその為に動きたいと思っております。
私は他の記事で東京の繁栄を「官製繁栄」「貧相な繁栄」と書きました。
東京とは雛鳥が口を開けて親鳥からのエサを待つように『お上から与えられ続けないと生きていけない虚弱体質』なのです。
だから地方から人をかき集めるのが限界に達すると今度はIR、カジノを与えなきゃ、となる。
さて東京にIR、カジノを与えたら次は何を東京に与えるのでしょうかね。
私には東京に与えるエサはもうこの国には東京が食べ尽くしたので何も残っていないように見えるのですが。
本気の地方創生なら関東圏は除外でしょう…
こういうやり方には不信感しかないです。