因幡電機産業株式会社は、東大阪市高井田中に研究開発施設「イノベーションセンター」を建設します。着工は2026年1月、竣工は2027年夏頃を予定。延べ面積は約9,900㎡、地上4階建て、木造ハイブリッド構造で、総投資額は約100億円。全額自己資金により整備されます。
建設地は、大阪物流センターに隣接する約5,800㎡の自社所有地。中期経営計画(2025〜2027年度)で設定された最大250億円の成長投資枠の中で、最重要施策のひとつとされています。
新拠点整備の3つの目的:製品・プロセス・人材の強化
今回の施設は、以下の3つの機能を強化するために設計されています。
1. 製品開発力の強化
空調配管資材を中心に展開してきた同社は、近年、産業・建築向けの関連製品にも開発領域を拡大。新施設では研究スペースや設備を拡充し、開発スピードの向上と新分野への対応を可能にします。グローバル市場向けの製品ローカライズ体制も視野に入れています。
2. 部門間連携と生産体制構築
研究から試作、検証、量産準備までを同一施設で行う体制を整え、製品化までの期間を短縮します。情報共有を促す交流スペースを立体的に配置し、部門間の壁を越えた協働体制を構築します。
3. 教育・採用機能の強化
施設内に大型セミナールームを設け、社内研修や産学連携を通じた人材育成を推進。就職希望者にとって魅力的な職場環境を整えることで、採用力の向上も目指します。
建物全体では、ZEB-Ready(ネット・ゼロ・エネルギービル)対応とCASBEE認証取得を目標とし、エネルギー効率と環境性能にも配慮しています。
因幡電機産業とは:電設資材・空調資材の大阪発の大手商社兼メーカー
因幡電機産業は1949年設立。本社は大阪市西区にあり、電設資材や空調設備用資材、自社製品、産業機器などを取り扱う東証プライム上場の技術系総合商社です。
2025年3月期の連結業績は、売上高3,620億円(前年比4.8%増)、営業利益235億円(同10.2%増)と過去最高を更新。営業利益率は6.5%で、電設資材が売上全体の約69%を占める一方、自社製品部門も約720億円にまで拡大しています。
同社グループには、警報機器メーカーのパトライト株式会社(旧・春日電機)があります。2004年に完全子会社化され、回転灯、積層表示灯、音声警報装置などを中心に、製造業・医療・交通・防災分野に展開。国内外に多数の拠点を持ち、高い市場シェアを維持しています。
今回のイノベーションセンター整備は、因幡電工(空調資材)とパトライト(表示・警報機器)という両主力ブランドの研究・開発基盤を横断的に支える施設とされ、グループ全体の競争力強化に資する計画です。
財務への影響と今後の展望
2026年3月期の業績への直接的影響は軽微と見込まれていますが、同社は本施設を、開発力、組織間連携、人材育成、環境対応の4要素を統合的に強化する長期戦略投資と位置づけています。また、製造業が集積する東大阪市に拠点を置くことで、地域との連携や優秀な技術人材の確保にもつながると期待されています。
【出典元】
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因幡電機産業株式会社「研究開発施設の建設に関するお知らせ」(2025年5月15日)
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2025年3月期決算短信・説明資料
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パトライト株式会社公式サイト・沿革情報