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【阪急神戸線】武庫川橋梁上に新駅設置が決定。2031年度末の開業目指し、西宮市と尼崎市の都市連携が始動

阪急神戸線において、長らく空白地帯となっていた武庫之荘駅〜西宮北口駅間に、新たな駅が誕生します。阪急電鉄と西宮市、尼崎市は2025年4月4日、新駅設置に関する基本協定書を締結。2031年度末の開業を目指し、事業に正式着手しました。本計画は交通利便性の向上にとどまらず、都市間連携を象徴する先進的なプロジェクトとして注目を集めています。


武庫川橋梁上に誕生する「市境をまたぐ橋上駅」

新駅の設置場所は、武庫之荘駅から約1.6km、西宮北口駅から約1.7kmの中間地点にあたる武庫川橋梁の上。両駅間は約3.3kmと阪急神戸線の中でも比較的距離が長く、鉄道アクセスの空白を埋める存在として、新駅のニーズは以前より指摘されてきました。

特筆すべきはその構造です。ホームは河川上の橋梁に設置され、上下線それぞれ8両編成対応の2面を整備。西側の改札口は西宮市に、東側の改札口は尼崎市に設けられ、自治体をまたぐ珍しい構成となります。このような橋上駅は全国的にも稀少で、インフラとしての注目度も高いと言えるでしょう。


総事業費は約86億円に増加、三者が均等に分担

新駅の整備費は、物価上昇等を踏まえた見直しにより、当初の試算から増額され約86億円に達します。費用は西宮市・尼崎市・阪急電鉄の三者がそれぞれ3分の1ずつ負担し、西宮市の負担額は約14億4,000万円と見込まれています。自治体側の負担分については、国の補助制度も活用される予定です。

施行者は阪急電鉄が担い、2025年度から詳細設計と各種手続きを開始。2026年度には本格的な工事に着手し、2031年度末の開業を目指します。


バリアフリー対応・モビリティ連携も視野に

駅舎はバリアフリー対応を基本とし、エレベーターやエスカレーターを完備。両市側に整備される改札口付近には、自転車駐車場なども設けられ、自転車と鉄道をシームレスに結ぶモビリティ連携の拠点としての役割も期待されています。


沿線全体への波及効果。まちの価値が変わる契機に

新駅開業によって、周辺エリアの居住利便性が高まり、沿線の人口増加・定住促進が期待されます。とくに、武庫川を挟んで広がる西宮市高木地区や尼崎市武庫之荘本町などは、これまで最寄駅からやや離れていたエリアであり、新駅により再評価される可能性があります。

また、駅周辺を起点とした中高層住宅や生活利便施設の開発が進展すれば、不動産市場にも好影響が波及し、地価や収益性の向上につながるでしょう。阪急阪神ホールディングスが掲げる「沿線バリューアップ戦略」においても、新駅設置は沿線価値の底上げを担う重要な施策の一環と位置付けられます。


都市間連携のモデルに。橋上駅がつなぐ未来のまち


本プロジェクトが持つ最大の意義は、鉄道インフラ整備を通じて自治体を横断する広域連携の実現に挑んでいる点にあります。西宮市と尼崎市の市境に位置する武庫川を「接続点」と見立て、駅をハブとした交通・都市機能の再編を図ることで、持続可能な都市構造のモデルを提示しようとしているのです。

駅設置を契機に、歩行者ネットワークの再構築や土地利用の再編、地域回遊性の向上といったまちづくりの展開が期待されます。市民の日常に寄り添う駅でありながら、広域都市構想の推進力としてのポテンシャルを秘める「武庫川新駅(仮称)」――その開業の日が待たれます。







出典・参考資料

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