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AppleシリコンとWintel帝国の崩壊。MacがIntelCPUと決別しArmベースの自社開発プロセッサを採用した理由



Appleは2020年11月10日にAppleシリコン『M1チップ』を搭載したMacBook Air、MacBook Pro 13インチ、Mac miniを2020年11月から発売すると発表しました!

Appleは2020年6月に開催した世界開発者会議WWDC 2020で、MacのCPUをIntelチップから自社開発プロセッサ「Apple Silicon」に移行する事を明らかにしていましたが、その第1ステージとしてM1チップを搭載したMacBook AirMacBook Pro 13インチ、Mac mini3機種をリリースする事になりました。

 

 

AppleSiliconとは?



Intelが開発したCPUは現在でも圧倒的なシェアを持っており世界中のパソコンで使用されています。世の中の9割を占めるWindows PCは、Intel x86アーキテクチャの上で動作しており、MacのCPUもIntel製が使われてきました。

それに対してAppleSiliconは、スマートフォン等で広く使われているArmアーキテクチャをベースにしたAppleが自社開発したプロセッサです。iPhoneやiPadなどに搭載されているAシリーズプロセッサをベースとしており、低消費電力かつワットあたりのパフォーマンスに優れています。Appleは自社で開発しているiPhone向けのCPUをベースにパソコン向けのAppleSiliconを開発してMacに採用する事にしました。

 

 

スマホ向けプロセッサーの劇的な性能向上



これまでPC向けのCPUとスマホ向けのCPUは両者の棲み分けが出来ていました。大雑把に言うと、大きなデータを取り扱う重たい処理はパワフルなパソコンで行い、小さなデータは省電力CPUを搭載したスマホで、といった具合です。しかし、モバイル通信速度の向上やコンテンツのメディアリッチ化が進み、それに合わせてスマホの性能がドンドン向上してきました。

Appleは、2008年にArmプロセッサを設計するP.A. Semiを買収し、iPhone 4、初代iPadで採用されたA4チップから自社で開発を開始しました。以降、2019年のA13に至るまで10世代に渡って改良を続けてきた結果、CPUの処理速度は100倍に向上したほか、GPUを強化したiPad向けのAプロセッサの場合、GPU性能でも100倍の処理速度を達成しました。スマホ向けのCPUの性能がPC向けのIntel CPUに近づきつつあります。

 

ソフトウェアとの互換性を保つため「Rosetta 2」が登場



IntelからAppleSiliconへの移行を決めたMacですが、CPUのアーキテクチャを変更するのは中々大変です。かみ砕いて説明すると、プレステと任天堂では同じソフトが動かないイメージで、Intel製プロセッサのx86_64ベースのアプリはApple Siliconでは動きません。

その為、Appleはソフトウェアとの互換性を保つために「Rosetta 2」を用意しました。「Rosetta 2」は、インテル用のアプリをApple Silicon Mac上で自動的に変換するソフトウェアで、M1プロセッサをサポートする新macOS「Big Sur」に搭載されています。「Rosetta 2」がどの程度の安定性と速度でインテル用のアプリを動かせるかはまだ解りませんが、OS9からOSXへの移行の時よりはスムーズであって欲しいと思います。

 

大きなリスクを負ってCPUを変える理由



AppleはMacに搭載するプロセッサのアーキテクチャを過去2回変えてます。最初のMacintoshはMotorolaの680×0系を採用していましたが、1994年にIBM・Motorolaと共同開発したPowerPCへ移行し、さらに2006年にPowerPCから現在のIntel x86へに移行しました。今回のArmベースの「Apple Silicon」への移行は実に14年振りのアーキテクチャ変更となります。

 

アップルが大きなリスクと手間を掛けてCPUを変更する理由は2つあります。

1つは、開発環境も含めて、スマートフォン、タブレット、そしてPCという3つのプラットフォームを1つのISAで統一できる事です。現在のApple製品はArm系とIntel系が併存しており、ソフトウエア開発に膨大なコストがかかっていると推測でき、これをArm系のAppleSiliconに統一する事で、開発コストを1つに集中する事ができます。

また、Appleは、AppleSiliconに対応するmacOS Big Surで、iOS/iPadOS用のアプリを動かすようにすると発表しており、将来的にはmacOS用のアプリとiOS系のアプリが1つに統合される可能性があります。これはアプリ開発者にとっても大きなメリットとなります。

2つ目のメリットは、半導体メーカーとしてのAppleに対する経済効果です。現在はIntelから調達しているMac用のCPUを自社製品に置き換える事で大幅なコストダウンが可能になり大きな経済効果が見込めます。iPhoneの収益性の高さを見るとその効果は絶大だと思います。また、MacのCPU(SoC)をArmベースにする事で、PC用、タブレット用、スマホ用といった風に、ダイのバリエーションで3つのプラットフォームに対応する事ができます。これにより、元となる設計が1つで様々なApple製品に横展開する事が可能になります。

 

 

ゲームチェンジャーは、またしてもスマホ



MacがArmベースのAppleSiliconに移行するトピックスは、実はもの凄くエポックメイキングが出来事ですこの変革をもたらしたのは、またしても「スマホ」です。

インターネットに接続するデバイスは、ネット黎明期はPCが主役でした。その後、2007年に初代iPhoneがスマートフォンの扉を開き、続いてGoogleがAndroidをリリース、今では誰もがスマホを片手にネット接続する「ユビキタス社会」が実現しました。一家に1台のPCに対して、スマホは一人1台が所有します。その為、両者の出荷台数には圧倒的な差が生まれました。

 

 

圧倒的な出荷台数のスマホ



米IDCが発表した2019年の世界のスマートフォン(スマホ)の世界出荷台数は13億7100万台(タブレット含まず)です。一方、米Gartnerが発表した2019年の年間を通したPCの出荷台数は2億6,123万台でした。スマホの出荷台数はPCの約5.26倍に達しており圧倒的なボリュームの差があります。

Appleの状況を見ると、2019年のスマートフォン市場においてAppleは市場シェア3位で1億9,100万台のiPhoneを出荷しました。タブレット市場ではiPadがが2019年通年の市場シェアが1位となり4,990万台を出荷しました。iPhone/iPadを合わせると約2億4,000万台の台数となります。それに対してMacの台数は1,835万台でその差は実に13倍以上あります。

スマホの爆発的な普及によりArmベースCPUのマーケットシェアは台数ベースでIntelを遙かに凌駕している状況です。スマホの経済圏は驚くべき成長を遂げました。

 

帝国の崩壊と新しい世界



PCの普及と共に成長し世界の覇権を握ったWindowsとIntelCPUを組み合わせた「Wintel帝国」ですが諸行無常は世の常です。爆発的に普及したスマホはPCの10倍の数量を販売する規模まで成長し、貧弱だったスマホ向けのArmベースのCPUは、いつの間にかPC向けのCPUに迫る性能を持つようになりました。

世界の覇権を握っていたいたはずのIntelですが、PC業界ではなく、スマホというPCと異なるデバイスによって、そのポジションが脅かされる事になりました。今回のAppleSiliconへの移行は、Windows95が登場してから今日まで続く「Wintel帝国」の崩壊を告げる象徴的な出来事で、実に30年振りのパラダイムシフトの始まりと言えます。

1 COMMENT

からや

将来、iphoneにosを統一するのではないでしょうか。ipadでwindows10のアプリを動かすエミュレータもあります。

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