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関空・神戸空港の飛行ルート案、発着枠拡大に向け陸域進入時の高度制限緩和、淡路島上空に新ルート設定


関空、伊丹、神戸の3空港のあり方を官民で議論する「関西3空港懇談会」が2023年6月25日に開催され、関空と神戸の両空港の発着回数を増やすため、国土交通省が兵庫県・淡路島の上空を通るルートの追加を柱とする新たな飛行経路を提案しました。今夏にも、関係する自治体で専門家による委員会を設置し、経路の妥当性や騒音の影響などについて検証する予定です。

国交省が示した飛行経路の見直しは、2022年9月の「関西3空港懇談会」で合意した関空と神戸空港の発着枠拡大の前提となるもので、2025年大阪・関西万博に向け、関空は1時間当たりの発着回数の上限を現在の46回から60回に、神戸空港も国内線1日当たり80回から120回に増やす方針です。

これにより、3空港の発着回数の上限を現在の約40万回から2030年頃を目処に約50万回に拡大し「空の玄関口」の受け皿を広げ、今後伸びが見込まれるインバウンド・アウトバンド需要を取り込み、地域全体の経済成長に繋げたい、という狙いがあります。

【出展元】
関西空域における飛行経路技術検討委員会 中間とりまとめ

現行方式の問題点


関西空港では、滑走路中心線間隔が 2,300mの2本の平行滑走路を離陸専用と着陸専用に分けた運用(専用滑走路運用方式)を行っており、当該方式による処理能力は、1時間当たり概ね 60 回ですが、現行空域おいては最大発着回数は 46回となっています。現在の問題点は以下の3点です。

問題点1:陸域進入時の高度制限により大阪湾で旋回


出発した航空機は、陸域進入時に最低 8,000ft 以上の高度を確保する必要があります。出発機は大阪湾内を大きく旋回し離陸から概ね30km地点まで同一経路を飛行した後、各方面へ水平分離するよう飛行しています。このため、湾内の空域における1機当たりの滞在時間が長くなり空域のひっ迫を生じさせています。

問題点2:淡路島を横切るルートに制限空域が存在



各方面から飛来する到着は、着陸するための最終進入を開始する進入開始点を通過するまでに、到着機を時間調整(整流)する必要があります。関西国際空港の到着経路においては、淡路島を横切る経路周辺に、悪天候等を除き飛行が制限されている空域が存在し、着陸誘導可能な範囲が限定されているため、到着機の時間調整に制約が生じています。

 

問題点3:明石海峡の空域容量が限界



明石海峡上空は、南風運用時には、高度が高い順より、1:伊丹(出発)、2:関空(出発)、3:関空(到着)、4:神戸(出発・到着)の4層構造となっています。 飛行経路が交差する地点においては、航空機相互間に 1,000ft 以上の高度差を確保することが必要で、明石海峡上空は、各航空機の高度、速度、上昇・降下率等のばらつきもあり、管制上の負荷が大きく、空域の容量としては既に限界にあります。

神戸空港の飛行経路については、周辺環境への配慮・地理的要因から、出発・到着ともに明石海峡上空を経由します。このため、先述の明石海峡上空の混雑が課題となっているほか、出発経路と到着経路が対面する形となるため、安全確保の観点から、発着回数が制限されています。

新型機の低騒音化と機材の小型化が進む



発着枠拡大に向けた新ルートを考える上で重要になるのが、空港を離発着する航空機の現状です。環境性能を向上させた新型機への世代交代が進み、伊丹空港の騒音公害が激しくなった1970年代に比べると大幅に低騒音化が進んでいます。

 



また、航空機の燃費が向上し航続距離が伸びた事や、従来よりも少ない旅客でも採算がとれる様になった事から、航空ネットワークが目的地らを直接結ぶ「ポイント toポイント方式」が主流となり、使用される機材の小型化が進んでいます。これによりさらに低騒音化が進みました。「関西3空港懇談会」では、これらの現状を踏まえて新ルートの検討が行われる事になりました。

 

発着枠拡大に向けた飛行ルートを提案



 

上記の問題点をクリアして、発着枠拡大を実現させる為に、下記の変更が提案されました。

まず、各出発経路について、離陸後直ちに分岐し各方面に向けて直進するルートに変更します。湾内での経路長の短縮に伴い、国際標準に準拠する飛行方式設定基準をもとに、上昇勾配7%で設定される陸地上空の制限高度は5,000ft に引き下げます。

さらに、現行ルートに加え、淡路島上空に南あわじルート(仮称)と南淡ルート(仮称)を新設し、計4経路に複線化します。さらに、関西空港の出発・到着に使用する滑走路を入れ替え、B滑走路(海側)を出発機、A滑走路 (陸側)を到着機とする見直しを行います。

航空機が淡路島の上空を通過する頻度が増し、高度も下がる事になりますが、国交省は「機材の小型化や性能の向上で以前より騒音は小さくなっている」と説明しています。

 

空港のサイズが都市の成長を決定する!



大阪・関西万博や大阪IR、そしてその後の成長戦略に向けても空港は非常に重要です。ポストコロナ時代、世界のグローバル化は益々進み、国際交流が加速する事が予想されます。成長著しいASEAN諸国や各国の旅客需要を受け止められる「受け皿」が絶対に必要で、それの有無が地域経済の発展に直結します。空港のサイズが都市の成長を決定付ける』時代が到来します。

 

 


台湾桃園国際空港:第2ターミナルビル

関西3空港は、主力の関空の受け入れ能力の増強、具体的には関空単体で6000万〜7000万人に対応できる容量が必要になります。その為にはT1改修後に途切れる事無く、2期空港島にフルスペックの新ターミナルビルの整備を進め、2030年代後半までに第三滑走路の建設が絶対に必要です。また、神戸空港は関西空港を補完する役割を明確にし、年間1000万人以上の旅客に対応できる施設が求められます。伊丹空港は短すぎる運用時間を延長した上で2000万人程度まで容量を拡大する必要があります。

 


先行する韓国:仁川国際空港の第2旅客ターミナルビル

ASEAN諸国やインド等の経済成長・各国の拠点空港の整備により、今後も世界的に航空需要が延びる事は間違いありません。これらのインバウンド需要に対応できなければ、新興国の経済成長の果実を取りこぼし、大阪や京阪神大都市圏が直面する「国際都市間競争」に取り残され、衰退の道を歩む事になります。

都市間競争の敗北は経済的な衰退につながります。これから劇的に進む少子化による人口減少によりって、域内の雇用が減り、税収が減り、インフラ維持もままならず、住民サービスの低下として我々の暮らしに直接跳ね返ってくる事になります。

少し話が大きくなりましたが、空港整備はそれぐらい重要で、関空T1改修後の動きが見えない現状に、とても強い危機感を持っています。

今回の空域拡大などにより、関西3空港の発着枠は2030年を目処に50万回に拡大する事になります。しかし、これは必要最低限の容量確保に過ぎません。

関西3空港は2030年代後半までに、最低でも1億人/年の航空旅客を受け止める発着回数と受け入れ施設が必要になると予想します。空港整備には非常に長い時間がかかるにので、その先のビジョンを、今から明確にしておく必要があります。

関西空域の新旧ルートの対比(北風時)

北風時の現行ルート




北風時の新ルート(案)

新旧ルートの対比(南風時)


南風時の現行ルート


南風時の新ルート(案)

2 COMMENTS

さんたん

関空2期島側に新しい展望スポットを作ってほしいですね。

ポンタ

・おはようございます。経路については概ね予想通りでしたが、まさか使用滑走路を入れ替えるとは思いませんでした。長期的には滑走路24L-24R間を短絡する北側誘導路を設けて欲しいかなと。南風新運用時に役に立ちます。
・欲を言えばKIXそらぱーく(近隣に水素STと第5/6駐車場があります)を従来の公園と簡易展望台にしてもらえると幸いですね。1期島のそれほどでなくていいので。管制塔にとって新運用時の06L離陸機が見えない様にならないのが前提ですが。
・神戸の容量増と国際線受け入れ(それぞれ1日80便化とこの内国際線20便)もこの分量ならよいと思います。関空被災時の保険になりますし、24時間運用も一応はできますし。長期的な航空需要の増加に鑑みれば、このくらいなら共倒れも起こらないと思います。あとは淡路島上空の飛行機が増えますので、上空飛行を認めて貰えるかどうかですね。

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