アラビアの風が吹く市場体験—大阪・関西万博『サウジアラビア館』で感じる伝統と未来

2025年4月13日に開幕する大阪・関西万博。サウジアラビアは、古代から続く伝統市場「スーク(Souq)」をモチーフにしたユニークなパビリオンを出展します。細い路地に小さな店舗が並ぶ空間は、アラビアの街角を散策しているような気分。伝統と革新が交差する“旅のような体験”が広がっています。

伝統建築×サステナブルデザイン



パビリオンの設計を手がけたのは、世界的な建築事務所「フォスター+パートナーズ(Foster + Partners)」。サウジの泥れんが建築や中庭文化にインスパイアされた構造は、砂漠の風景を思わせるフォルムに加え、現代的で環境に配慮した設計となっています。建物は10棟以上のブロックで構成され、それぞれが内と外をやわらかくつなぐ構造です。

屋根にはソーラーパネルが敷設され、雨水の回収と再利用システムも導入。建材の多くは再利用可能な素材で、パビリオン全体でのカーボン排出を極力抑える持続可能な建築を実現しています。

サウジの「今」と「未来」を体験する展示構成



パビリオン内には、サウジの歴史、急速な進化、そして未来に向けたビジョンを紹介する5つの展示ゾーンが展開されています。

 


  • 持続可能な海:紅海沿岸で展開されるサンゴ再生プロジェクトや、アブドラ王立科学技術大学(KAUST)の環境保全イニシアチブを紹介。
  • 進化する都市:750万本の植樹を掲げる「グリーン・リヤド」や、世界遺産級のオアシス都市「アルウラ」など、都市再生と自然保全の取り組み。
  • 人間の無限の可能性:スポーツ、教育、芸術を通じて市民一人ひとりの可能性を引き出す社会像を提示。
  • イノベーションの頂点:未来都市「NEOM」や水上産業都市「オキサゴン」、線状都市「THE LINE」など、世界を驚かせるサステナブル都市構想。
  • 文化視覚芸術スタジオ:工芸、デザイン、ファッション、映像など、サウジのクリエイティブカルチャーを五感で体感できる空間。


パビリオンの中庭では、万博期間中に700回以上のイベントを開催予定。伝統舞踊や音楽、映画上映、DJセット、ファッションショーなど、日替わりで多彩なパフォーマンスが展開されます。

サウジと大阪、文化でつながる「市場の記憶」



サウジのスーク文化と大阪の商店街文化が共鳴する空間には、さまざまな体験型店舗やスポットが設けられています。
テナント名 概要
Saudi Cafe ガフワ(サウジ式コーヒー)やデーツを味わえるカフェ。中東の香り漂う癒しの空間です。
Irth Restaurant サウジ13地域の郷土料理をアレンジ。スパイス香る「マルグーク」や甘味「マクシュシュ」などを提供。
サウジ・スーク 陶器、キャンドル、手工芸品、伝統衣装など200種類以上のアイテムを取りそろえたギフトショップ。
サウジ広場 毎晩ライトアップとともに開催される音楽・舞踊イベントが魅力の中庭広場。
コラボレーション・ハブ ビジネスマンや投資家向けに、王国のビジョンやプロジェクトを紹介するプレゼンテーション会場。

日・サウジ70年の絆と未来へのメッセージ



2023年11月、パビリオンのデザインとロゴは大阪・堂島リバーフォーラムで発表されました。ロゴは、日本語の「サウジアラビア」とアラビア書道が融合したデザインで、文化的共鳴を象徴するものです。

1955年に国交を樹立して以来、日本とサウジアラビアは経済・文化両面で関係を深化させてきました。現在は「日・サウジ・ビジョン2030」のもとで、持続可能な未来を共に創るパートナーとして協力が進められています。

パビリオン政府代表のアルマズヤッド・オスマン氏は「来場者の皆さんが、サウジの多様な魅力と未来への希望を感じられるような“発見の旅”を提供したい」と語っており、その想いは空間全体に込められています。



ゆるやかな中庭を抜け、香辛料の香りと音楽に包まれながら進むうちに、気がつけばサウジアラビアという国の「今」と「これから」が見えてくる——そんな特別な体験が、夢洲の一角であなたを待っています。

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