北陸新幹線の開業を機に再開発が進む金沢駅西口に、新たな文化拠点が誕生します。西松建設とZeppホールネットワークが連携し、約1,200人を収容するライブホール「Zepp金沢(仮称)」を2027年春に開業予定です。
かつて西金沢で頓挫した同様の構想が、都市構造の変化を映し出す形で駅西に舞台を移し、再び動き出しました。この進出は、金沢の都心軸が静かに移りつつあることを象徴しています。
駅西の最前線─徒歩10分の好立地にライブ拠点誕生
建設予定地は金沢市広岡3丁目、JR西日本が所有する約3,000㎡の敷地。現在はコインパーキングとして利用されていますが、金沢駅から徒歩10分という好条件に加え、周囲にはホテルやオフィス、公共施設が集積しています。施設の建設は西松建設が担当し、運営はZeppホールネットワークが行います。JR西と石川県も地域活性化に向けて連携し、広岡エリアのにぎわい創出を後押しします。
Zeppは全国主要都市に展開するライブハウスブランドで、1,000〜2,500人規模の会場として高い集客力を誇ります。飲食・宿泊・観光といった周辺消費との連動も期待されており、駅徒歩圏の立地がその効果を最大化します。
経済に響く夜─ライブが動かす金沢の消費地図

Zepp金沢は、単なる施設整備にとどまらず、金沢という都市の夜間経済を活性化させる起爆剤と位置づけられます。
昼は兼六園や21世紀美術館、夜はライブで過ごす「一日完結型観光」の導入により、宿泊や飲食などの消費が誘発され、都市の稼働時間は大きく拡張されます。
想定では、年間100〜150公演、1公演あたり平均1,000人の来場、1人1万円の消費で、最大10億円超の年間経済効果が見込まれています(※推計値)。
都心が動く─香林坊から駅西へ、静かなる主役交代

伝統的な都心軸は、香林坊〜武蔵を結ぶ百万石通りに沿って形成され、大企業の北陸支店などが集中する金融・行政の中枢でした。しかしこれらのオフィス群は高度経済成長期に建設されたものが多く、老朽化と更新時期を迎えています。

一方、駅西から石川県庁方面に延びる50m道路(県道17号)沿道では、駐車場付きの新築ビルが次々と建設され、クルマ社会に対応した新たな都心軸として成長中です。営業や通勤に車が不可欠な北陸地域において、駅西エリアの利便性と再開発余地は大きな優位性を持ちます。
Zeppの駅西進出は、こうした都市構造の変化を可視化する動きであり、文化の重心が駅西に移り始めていることを象徴しています。
地元カルチャーの飛躍台─Zeppが拓く“次の表現空間”

金沢市内には、vanvanV4や金沢AZといった中規模のライブハウスが存在し、地元バンドや学生イベントなどの文化活動を支えてきました。Zepp金沢は、それらの延長線上にある“次のステージ”として位置づけられ、地元アーティストや若者が活躍する舞台となる可能性があります。
さらに、大学との連携や地域型フェス、クリエイター育成ワークショップなどが開催されれば、「観る文化」から「創る文化」への接続点として、地域文化の持続可能性にも貢献するでしょう。
誰が来る?─Zepp金沢に集うアーティストたち

Zeppはこれまで、YOASOBI、Da-iCE、Tani Yuuki、aikoなどの全国ツアー会場として使用されてきました。Zepp金沢でも、こうした中堅〜人気上昇中のアーティストの公演が期待されますが、現時点で出演者は発表されていません。
また、K-POPやアニソン、海外インディーズといったジャンル横断的なライブにも対応でき、多様なファン層の誘客と観光消費を喚起する可能性があります。
一度は頓挫、そして再起─西金沢からの学び

2019年、西金沢の旧JT金沢工場跡地にて、Zeppを誘致する計画が明らかになりました。しかし、周辺住民から治安悪化や騒音への懸念が示され、署名活動などの反対運動が展開。新型コロナの影響もあり説明会が開けず、計画は凍結されました。
その後、より都市機能が集積し、開かれた立地である駅西エリアに計画が再移行。関係機関の協力も得られる環境となり、改めて実現への道を歩み始めました。この流れは、NIMBY(Not In My Back Yard)を乗り越えた先進事例としても注目されています。
最終章─ライブ施設が描く金沢の未来地図

Zepp金沢(仮)は、文化施設の枠を超え、都市に夜間のにぎわいをもたらす拠点です。その立地選定は、金沢の都心軸が駅西へと移りゆく現在の構造転換を映し出しています。
これにより、香林坊や片町といった旧来の都心は“昼の文化中枢”としての再定義が求められ、駅西は“夜の拠点”として機能分担が進むかもしれません。
Zepp金沢の成否は、駅西の拠点性をさらに高める一方で、都市全体の均衡ある成長と文化の多様性維持のための戦略的調整が問われる契機ともなるでしょう。
※本記事は以下の報道・資料に基づいて構成されています:
・北國新聞(2025年5月8日付)「金沢駅西にライブホール 今秋着工、2027年春開業『Zepp』」
・金沢まちゲーション、いしかわ案内人 ほか関連地域メディア
・西松建設・Zeppホールネットワーク・JR西日本の過去発表資料
北陸の小京都ー
かつて金沢はそう呼ばれていました。
しかし金沢の文化は武家文化。京都は公家文化。
金沢はやんわりと小京都と呼ばれるのを拒否し今に至ります。
誇り高き北陸の雄、金沢。
金沢のチャレンジ、動向は他の地方都市の大いなる参考となる事でありましょう。
あ、あと、JR西日本さん、サンダーバードを1日何本か金沢・富山から大阪へ直通運転出来ないものですかね。
北陸在住の知り合いが大阪へ出るのに不便でしゃーない、と愚痴をこぼしております。