“外資×地方創生”が拓く未来──北九州・糸島発、アジアとつながるメガDC構想の最前線
生成AIや自動運転、IoTの発展に伴い、膨大なデータを処理するデータセンター(以下DC)の需要が急増しています。従来は東京圏や大阪圏に集中していたDCですが、災害リスクや電力供給の課題を背景に、地方分散が進みつつあります。こうした中、米系不動産投資会社アジア・パシフィック・ランド(APL)グループが、福岡県北九州市と糸島市で総額1兆円規模のDC開発を進めると発表し、大きな注目を集めています。海外マネーが地方を変える──APLの日本DC事業が始動
APLは1994年創業の米国系不動産投資会社で、東京や大阪でオフィスや商業施設への投資を行ってきました。今回のDC開発は日本で初となるデジタルインフラ事業であり、地方への外資参入としても注目されます。背景には、生成AIやクラウド利用の拡大に伴うデータ処理ニーズの急増があります。APLは、都市圏のみでは需要に対応しきれないと判断し、地方での大規模開発に踏み切りました。日本は法制度の安定性や電力供給の信頼性、地政学的な安全性から、外資にとって魅力ある市場と位置づけられています。
なぜ北九州・糸島なのか?──地理・産業・通信の“三拍子”が決め手

首都圏ではDC向けの用地確保や電力供給が難しくなっており、九州北部は広大な敷地、安定した電力、高速通信インフラ、再生可能エネルギーの導入余地といった点で優れた条件を備えています。
北九州市では若松区の北九州学術研究都市内にある約62,700㎡(約19,000坪)の敷地に、総受電容量120MWのDCを建設。2026年に建設を開始し、2027年9月の受電開始を目指しています。投資額は約1,250億円と見込まれています。糸島市では多久・富地区において、122,000㎡の敷地に総受電容量300MW、投資額3,000億円超となる九州最大級のDCを建設。2025年春から造成工事を開始し、2029年から段階的な運用開始が予定されています。
九州は韓国や中国、東南アジアに近接し、国際通信インフラの要となる海底ケーブルの陸揚げ拠点も存在します。APLはこれらの地理的優位性を踏まえ、九州をアジア全体を視野に入れた国際的なDCハブとして育成する戦略を掲げています。また、製鉄や自動車産業で発展してきた北九州は産業インフラと技術人材の蓄積があり、IT関連分野との相性も良好です。
原発と再エネが支えるDC電力網──持続可能な供給体制の裏側
DCの運用には、常時稼働可能な大容量電力の確保が必要です。九州電力管内では、川内原発や玄海原発の再稼働が進んでおり、ベースロード電源の安定供給が可能となっています。APLもこうした電力環境を評価し、九州を開発地に選んだ要因の一つに挙げています。さらに、太陽光・風力といった再生可能エネルギーの導入も進んでおり、糸島市では地域の再エネ資源を活用した「クリーンDC」の構想が進められています。環境配慮と安定供給の両立が、次世代DCの重要なテーマとなっています。
メガDCがもたらす地域革命──雇用・産業・まちづくりに与える影響
DC建設により、建設・電設業界を中心に多くの地元事業者への発注が見込まれ、稼働後も運営・保守・警備などの雇用が創出されます。加えて、周辺地域にはIT企業や研究機関の集積が期待され、産業構造の高度化に寄与する可能性もあります。北九州市が掲げる「バックアップ首都構想」とも親和性が高く、行政機能や企業の災害対策拠点としての役割を担うことも想定されます。こうした分散型都市インフラは、東京一極集中の是正、若年層の地元定着、人口減少対策にもつながると期待されています。
九州からアジアのDC中枢へ──APLが描く未来のロードマップ

APLは、2029年までに福岡県内で250MW以上の受電に対応できる体制を整備する方針です。すでに約500MW相当の用地を確保しており、段階的な事業拡張が可能となっています。また、米デジタルインフラ投資会社GCIとの合弁事業により、土地取得から設計・許認可取得までを一貫して自社対応できる体制を構築。顧客ニーズに応じた柔軟な対応が可能です。
APLは「いつでも稼働できるDC」を整備し、海外大手クラウド企業をはじめとした需要家の誘致を目指しています。韓国・釜山やベトナムなど東アジアの有力拠点と並ぶ、国際競争力を持つ「第3のDCハブ」として、九州が名乗りを上げる日は近づいています。
情報出典:
- 朝日新聞デジタル「九州にデータセンター1兆円規模投資へ、米投資会社」
- 日本経済新聞「APLグループ、糸島に九州最大級データセンター計画」
- Cloud Watch「APL×GCI、北九州に120MWデータセンター共同開発」
北九州市にIT電力120MWの巨大データセンターを建設!投資額は1250億円、米不動産投資・開発のAPL、2027年秋までに着工
戦後日本の高度経済成長は東京ー大阪―福岡を結ぶ「太平洋ベルト地帯」の重化学工業化で達成されました。それが「経済成長の恩恵を全国に」という田中角栄の列島改造計画で、太平洋ベルトへの再投資が鈍り、重化学工業から電子・通信など新技術産業への脱却が遅れ、世界に取り残されました。太平洋ベルトは東だけに投資が集中し、形をなさなくなっています。
日本再生は太平洋ベルト全体にもう一度再投資し、全線で活性化するしかありません。とりわけ西の端の九州の再投資は必要です。