鉄道にも自動運転の波が押し寄せています。国土交通省は「鉄道における自動運転を導入する場合の技術的要件の検討」を行っています。人口減少時代を迎え、鉄道分野でも運転士や保守作業員等の確保、養成が困難になってきています。特に経営環境の厳しい地方鉄道では係員不足が深刻な問題となっています。このため、鉄道事業者はより一層の業務の効率化・省力化が必要となり、その一環として運転士の乗務しない「自動運転の導入」が求められる様になりました。
【出展元】
→鉄道における自動運転を導入する場合の技術的要件の検討
鉄道の自動運転は、これまで人が容易に線路内に立ち入れない新交通システム等で実現されています。自動運転を行うには、踏切のない高架構造等であること、駅にホームドアがあること、自動列車運転装置が設置されていることなどの要件が技術基準等で定められています。 その為、踏切等がある一般的な路線では、安全・安定輸送の観点から導入されていません。
現行法では踏切のある在来線での自動運転は不可能ですが、社会情勢の変化に伴い、一般的な路線を対象に、センシング技術やICT、無線を利用した列車制御技術などの最新技術を利活用し、鉄道分野の生産性革命に繋がる自動運転の導入に向けて、技術的要件の検討が進んでいます。最新技術を導入する事で規制緩和を行い、踏切等がある一般的な在来線での自動運転を目指す方向性です。
GoA (Grades of Automation) 自動運転の乗務形態による分類 出典:国土交通省 | |||
自動化レベル | IEC(JIS)による定義※ | 搭乗者 | 導入状況 |
GoA0 | 目視運転 TOS | 運転士・車掌 | 路面電車 |
GoA1 | 非自動運転 NTO | 踏切等のある一般的な路線 | |
GoA2 | 半自動運転 STO | 運転士(列車起動、ドア扱い、 緊急停止操作、避難誘導) |
東京地下鉄(丸ノ内線、南北線 等)TX |
GoA2.5 | 添乗員付き自動運転 | 前頭に運転士以外の係員 (緊急停止操作、避難誘導) |
無し |
GoA3 | 添乗員付き自動運転 DTO | 前頭以外に乗務する係員 (避難誘導) |
舞浜リゾートライン |
GoA4 | 自動運転 UTO | 係員の乗務無し | ゆりかもめ,神戸新交通 |
※IEC 62267(JIS E 3802):自動運転都市内軌道旅客輸送システムによる定義 GoA:Grade of Automation TOS:On Sight Train Operation, NTO:Non-automated Train Operation, STO:Semi-automated Train Operation, DTO:Driverless Train Operation, UTO:Unattended Train Operation 都市部と地方、それぞれの状況に応じて目指す自動運転レベルを検討 JR九州は2019 年 12月下旬~2020年2月中旬に香椎線 西戸崎駅~香椎駅間で終列車後に自動運転の実証実験を行いました。試験車両は819 系(DENCHA) 1 編成(2 両)。走行試験は自動運転(GoA2.5)に相当する前頭に運転士が乗務した状態で行われました。既存の技術である ATS-DK をベースとした自動列車運転装置の開発の一環として走行試験を行い、車両の制御機能(加速・惰行・減速・定点停止等)や運転時分、乗り心地などを確認し技術検証が行われました。 【出展元】 →自動列車運転装置の走行試験を実施します JR九州が開発している自動列車運転装置は、既存の技術である ATS-DK をベースとしており「大きなインフラ投資が不要(低コスト)」なのが特徴です。さらに重要なのが、列車運転士の国家資格を持つ人材が減っているなか、列車の運行要員を確保することです。現在、日本で行われている列車の自動運転で、先頭に乗務員がいる場合、その乗務員は「運転士」の国家資格を持つ人材です。 JR九州が目指している自動運転は、運転士の代わりに係員が列車先頭に乗務します。緊急時における停止操作、ほかの列車の停止手配(列車防護)、旅客の避難誘導などを行います(試験が行われている香椎線には踏切も存在)。「無人運転」を目指しているものではありません。「係員」は「運転士」ではないため国家資格は不要なので、運行に必要な人材を確保しやすくなるとの事。 地方では都市部に比べコスト削減要求が強く、人材不足が深刻です。運転士を係員に置き換える、地方の自動運転に対する取り組みは、鉄道の存続をかけた取り組みと言えそうです。 |
これからは必須の技術でしょうね、間違いなく…