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【暫定版】全国百貨店売上ランキング 2025(2024年度版)売上で見る“都市の顔”:伊勢丹新宿・阪急梅田・名古屋タカシマヤの三強時代


三越伊勢丹、H2O、髙島屋、J.フロントの百貨店大手4社の決算が出揃ったことを受け、2024年度の全国百貨店売上高ランキング表を作成しました。

本ランキングでは、これら大手4社の決算資料に基づき、主要店舗の売上高を反映しています。近鉄百貨店については、資料に明記された「あべのハルカス近鉄本店」のみを掲載。その他の店舗については、新基準により極端に低い数字しか確認できず、除外としました。西武・そごうも店舗別売上を非開示としているため未掲載としています。

地方百貨店については、決算資料や報道情報などから規模の大きな店舗の実績を収集してリスト化していますが、個人での収集には限界があり、すべてを網羅しているわけではありません。本記事はあくまで“暫定版”としての位置づけです。今後、出典明記のうえで情報をご提供いただければ、ランキング表のアップデートしたいと思ます。

大都市の百貨店が示す新しい消費構造

2024年度の全国百貨店売上ランキングからは、業界の構造変化と新たな競争軸がより明確に見えてきました。首位に立ったのは、伊勢丹新宿本店(東京都新宿区)。売上は4,212億円と、唯一の4,000億円台を記録し、前年比+12.1%という高い成長率を達成。百貨店の再編や淘汰が進むなか、同店は都市を象徴する“生活の拠点”として、その地位を固めています。

これに続いた阪急うめだ本店(大阪市北区)は、前年比+16.3%の成長を記録し、売上は3,653億円。体験価値を軸に据えたラグジュアリー戦略が、国内外の富裕層を惹きつけています。3位のJR名古屋タカシマヤも2,154億円を売り上げ、駅直結の立地と高単価商品の強みを活かして安定した成績を残しました。



特筆すべきは、インバウンド需要の回復に伴い関西圏の百貨店が躍進した点です。阪急うめだ本店、大阪髙島屋、大丸心斎橋店といった主要店舗が、訪日観光客による高額商品の購買を背景に、免税売上を大きく伸ばしました。ラグジュアリー化粧品、時計、宝飾などを中心とするカテゴリーでの成長が、売上全体を強く牽引しています。

このような再評価の動きは、首都圏や関西圏に限定された現象ではありません。地方都市の百貨店においても、地域密着型の都市中枢機能を発揮しながら、高い売上実績を記録する例が目立ちます。

【全国百貨店売上ランキング|1〜20位】※暫定版

順位 店舗名 所在地 売上高(億円) 前年比(%) 百貨店グループ
1 伊勢丹新宿本店 東京都新宿区 4,212.00 12.1 三越伊勢丹
2 阪急うめだ本店 大阪市北区 3,653.49 16.3 H2O
3 JR名古屋タカシマヤ 名古屋市中村区 2,154.00 11.0 髙島屋
4 大阪髙島屋 大阪市中央区 1,809.81 13.7 髙島屋
5 日本橋三越本店 東京都中央区 1,616.00 5.7 三越伊勢丹
6 日本橋髙島屋S.C. 東京都中央区 1,605.02 7.5 髙島屋
7 横浜髙島屋 横浜市西区 1,424.21 5.8 髙島屋
8 松坂屋名古屋店 名古屋市中区 1,316.35 3.8 J.フロント
9 あべのハルカス近鉄本店 大阪市阿倍野区 1,242.00 2.5 近鉄GHD
10 銀座三越 東京都中央区 1,241.00 18.5 三越伊勢丹
11 松屋銀座 東京都中央区 1,224.00 20.3 松屋
12 大丸心斎橋店 大阪市中央区 1,152.61 20.4 J.フロント
13 髙島屋京都店 京都市下京区 1,115.09 14.6 髙島屋
14 東武百貨店 池袋本店 東京都豊島区 1,102.00 13.0 東武鉄道
15 髙島屋新宿店 東京都渋谷区 1,000.16 13.5 髙島屋
16 大丸神戸店 神戸市中央区 984.04 7.1 J.フロント
17 岩田屋本店 福岡市中央区 約900.00 10.0 三越伊勢丹
18 大丸札幌店 札幌市中央区 882.53 16.9 J.フロント
19 大丸東京店 東京都千代田区 845.13 7.9 J.フロント
20 大丸京都店 京都市下京区 787.75 11.7 J.フロント

地方百貨店の逆襲:都市の中枢機能として売上を牽引

地方においても岩田屋本店(福岡市/約900億円)、大丸札幌店(札幌市/882億円)、博多阪急(福岡市/694億円)、鶴屋百貨店(熊本市/470億円)などが全国トップクラスにランクインしています。これらの百貨店は、単なる商業施設を超え、生活・文化・経済のハブとしての役割を果たしています。

生活インフラとしての百貨店



たとえば鶴屋百貨店(熊本市)は、熊本駅から距離がある上通地区に立地しながら、市民の生活圏に根ざしています。「鶴屋に行けば間違いない」という信頼感を背景に、ギフト、催事、地域文化イベントなどを通じて都市生活の中に組み込まれています。

駅直結の動線支配力と高い集客力



一方、大丸札幌店や博多阪急は、駅直結型のロケーションを活かし、通勤・観光・日常利用の各層を取り込みました。特に大丸札幌店は過去最高の882億円を更新。博多阪急も天神地区に匹敵する購買重心を形成し、駅と都市機能が一体化したモデルケースとなっています。

地場富裕層との強固な接点



岩田屋本店や大丸札幌店では、外商部門が引き続き機能しており、地域の富裕層に対して非公開イベントやパーソナルサービス、特別サロンを提供。関係性の深度がLTV(顧客生涯価値)に直結する点において、地方百貨店の外商戦略は一定の優位性を保っています。

地方ならではの「一人勝ち」構造

地方都市では競合百貨店が少ないため、1店舗への来店と消費が集中しやすい構造があります。鶴屋百貨店や井筒屋などは地域内で圧倒的な存在感を持ち、安定的な売上を支えています。こうした構造は、都市規模に応じた柔軟な戦略と地域密着によって成立しています。




考察:百貨店の価値は「規模」から「意味」へ

2024年度のランキングは、売上の多寡そのものよりも、「その百貨店が都市の中でどのような意味を持つのか」が新たな評価軸になっていることを浮き彫りにしました。生活や文化と結びつき、都市機能の一部として存在する百貨店こそが、競争環境においても持続可能な優位性を確保しています。

いま、百貨店は「モノを売る場所」から、「都市をつなぐ装置」へと変貌を遂げています。地方百貨店の好調は、その転換を象徴するフロントランナーとして、次なる百貨店モデルの方向性を示しているのです。

【全国百貨店売上ランキング|21〜65位】※暫定版

順位 店舗名 所在地 売上高(億円) 前年比(%) 百貨店グループ
21 博多阪急 福岡市博多区 693.58 11.3 H2O
22 阪神梅田本店 大阪市北区 647.56 -2.0 H2O
23 名古屋三越 名古屋市中区 632.00 2.5 三越伊勢丹
24 札幌丸井三越 札幌市中央区 627.00 3.6 三越伊勢丹
25 博多大丸 福岡市中央区 603.00 11.5 J.フロント
26 大丸梅田店 大阪市北区 600.31 9.1 J.フロント
27 トキハ 本店 大分市 536.00 3.0 地方百貨店
28 髙島屋玉川店 東京都世田谷区 480.29 3.2 髙島屋
29 鶴屋 百貨店 熊本市中央区 470.00 3.3 地方百貨店
30 藤崎本店 仙台市青葉区 461.30 3.6 地方百貨店
31 井筒屋 小倉本店 北九州市小倉北区 440.00 0.0 地方百貨店
32 神戸阪急 神戸市中央区 429.81 6.3 H2O
33 山形屋 鹿児島店 鹿児島市 379.00 3.2 地方百貨店
34 伊勢丹浦和店 さいたま市浦和区 362.00 -6.7 三越伊勢丹
35 丸井今井 札幌本店 札幌市中央区 350.00 10.0 三越伊勢丹
36 新潟三越伊勢丹 新潟市中央区 339.00 -5.4 三越伊勢丹
37 髙島屋柏店 千葉県柏市 336.65 -3.1 髙島屋
38 福岡三越 福岡市中央区 329.00(推定) 推定 三越伊勢丹
39 伊勢丹立川店 東京都立川市 318.00 -1.2 三越伊勢丹
40 いよてつ髙島屋 松山市 308.30 9.0 髙島屋
41 松坂屋上野店 東京都台東区 273.19 7.5 J.フロント
42 仙台三越 仙台市青葉区 263.00 -4.6 三越伊勢丹
43 札幌三越 札幌市中央区 255.00 10.0 三越伊勢丹
44 高槻阪急スクエア 大阪府高槻市 248.59 4.6 H2O
45 西宮阪急 兵庫県西宮市 247.74 -0.8 H2O
46 松坂屋静岡店 静岡市葵区 183.76 3.7 J.フロント
47 岡山髙島屋 岡山市北区 169.71 -8.4 髙島屋
48 高崎髙島屋 群馬県高崎市 167.34 2.4 髙島屋
49 泉北髙島屋 大阪府堺市南区 147.22 -2.4 髙島屋
50 阪急メンズ東京 東京都千代田区 139.66 2.6 H2O
51 千里阪急 大阪府豊中市 135.36 -4.9 H2O
52 川西阪急 兵庫県川西市 123.62 -3.5 H2O
53 髙島屋EC店 オンライン 104.74 0.0 髙島屋
54 堺髙島屋 大阪府堺市堺区 101.56 -1.7 髙島屋
55 大丸下関店 山口県下関市 73.99 -5.3 J.フロント
56 宝塚阪急 兵庫県宝塚市 69.58 1.4 H2O
57 岐阜髙島屋 岐阜市 68.88 -46.8 髙島屋
58 大宮髙島屋 さいたま市大宮区 67.64 -2.8 髙島屋
59 大丸須磨店 神戸市須磨区 63.15 -1.0 J.フロント
60 松坂屋高槻店 大阪府高槻市 54.65 0.4 J.フロント
61 大井食品館 東京都品川区 44.75 -1.4 H2O
62 大丸芦屋店 兵庫県芦屋市 42.46 -1.3 J.フロント
63 阪神・にしのみや 兵庫県西宮市 42.20 3.0 H2O
64 都筑阪急 神奈川県横浜市 32.14 0.1 H2O
65 あまがさき阪神 兵庫県尼崎市 30.94 -1.0 H2O

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