近鉄と福山通運は、2021年3月29日付けのニュースリリースで大阪と名古屋を結ぶ名阪特急「アーバンライナー」を使用した貨客混載事業を、本年夏頃を目処に実施することで合意したと発表しました。今後、国土交通省に対し物流総合効率化法に基づく総合効率化計画の認定申請を行うとの事です。
【出展元】
→名阪特急「アーバンライナー」を使用した貨客混載事業の実施について
これまで大阪市内~名古屋市内間の輸送については、翌日以降に配送するサービスが主流で、当日中に配送するにはトラック等をチャーターする方法が一般的でした。今回の貨客混載事業では、大阪市内~名古屋市内間の当日配送が安価で可能となり、利用者の利便性が向上します。
主な顧客ターゲットは、名阪間での工業製品・部品、商品(日用品・衣料品)等を配送する事業所間を想定。近鉄は、午前中に企業から集めた荷物を特急列車に載せて名阪間を輸送。荷物の積み込みには車内販売用のスペースを活用します。福山通運は駅までの集荷と駅からの配達を行います。
今回の貨客混載事業実施には、コロナ禍の影響を受けダメージを受けている近鉄が少しでも新しい収益源を確保したい事情があります。そこで同じ近鉄グループの福山通運と組んでアーバンライナーの空きスペースを活用した新規ビジネスを立ち上げる事になりました。
車両にある車内販売用スペースを活用する事で車両を大きく改造する事なく事業を始める事、配送に特化する事で荷物単価を上げる、福山通運側は道路事情に関わらない安定した輸送ルートの確保やドライバー不足対策など繋がるなど双方にメリットがあります。
近鉄は沿線の通勤輸送に加え、新幹線からの乗り継ぎ客を特急に乗せて同社グループの観光地に送り込む必勝パターンを構築してきましたが、コロナ過は同社のビジネスモデルを根底から覆す事になりました。
先日の都ホテルの8物件を売却し緊急避難的にキャッシュを確保する動き、今回のアーバンライナーを活用した貨客混載事業の実施、細かなところでは自動改札機の大胆なIC専用化によるメンテナンスコストの削減。キャッシュを確保し、少しでも収益上げ、経費を削減する。近鉄が生き残りをかけた本気のサバイバルを始めました。
なんば⇒名古屋、よりも途中駅(例えば、桑名・四日市あたり)から大阪市内までの日中のニーズの方が工業製品としてはニーズが高いのかも。ただ貨物スペースとなる車販室部分が狭すぎて量は扱えないのかもしれませんが。まずは特定の荷主を確保してニッチな商品として確立させていくのでしょう。同業者としては非常に興味があります。