大阪観光局は2019年10月21日付けのプレスリリースで、2019年上半期(1~6月)の訪日外国人の大阪への来訪者数が前年同期比6%増の623万3千人で過去最高になったと発表しました。
外交問題の影響を受け韓国からの来阪者数は15%減少しましたが、中国が19%増化するなど全体では増加トレンドが続き、過去最高実績となりました。大阪観光局は2019年通期についても「韓国の減少分を中国のほか、タイ、マレーシア、ベトナムなどの東南アジア、欧米豪を強化する事でし、来阪者1200万人を達成できるよう努めたい」との事です。
【出展元】
→大阪観光局>2019年上半期(1~6月)の来阪者数
中国・韓国・台湾のアウトバンドはまもなく飽和。次は東南アジアが成長する
大阪のインバウンドの実績は中国(455万人)・韓国(239万人)・台湾(122万人)の3カ国の合計は816万人で、全体(1142万人)の71.4%を占めています。※数値が確定している2018年(暦年)の値
これはLCCが得意とする飛行時間約3間圏内を中心に大量のインバウンドを引き寄せていると推測できます。ただ、中韓台からのインバウンド需要は日本の想定市場規模の80%以上が現実化しており、増加率は早晩対象国の経済成長と同じ伸び率に収斂して行くと思われます。
今後は、タイ・マレーシア、インドネシア、ベトナムなど東南アジア各国の経済成長および空港整備が進むため、これら地域のアウトバンドが大きく成長すると予想できます。またLCCが使用している中型旅客機の飛行距離や快適性が向上しているので、LCCがカバーする飛行時間の領域が拡大する事が予想され、これも日本のインバウンドにとってプラスの要因となります。
ドイツからの来阪者4万人の衝撃!欧州客を強化して世界最強のインバウンド都市を目指せ
世界最大のアウトバンド市場は欧州です。インバウンド1人当たりの消費額は対象国からの距離と比例します。時間とコストかけて訪れた遠くの国にはできるだけ長く滞在したい、といったロジックが働くからです。たとえばフランスを起点に眺めてみると、欧州諸国は近場な外国でこれらの国々からの旅行客は滞在日数も消費額も小さくなります。逆に日本・中国・韓国など東アジアからフランスを訪れる旅行客は滞在日数が長く消費額が大きくなります。
世界最大のアウトバンド市場である欧州から日本や大阪を訪れる旅行者は潜在市場に対してまだまだ少ない状況です。逆に考えると欧州の需要を取り込む事が出来れば、日本/大阪のインバウンド市場はまだまだ拡大出来ます。
下の一覧表は大阪観光局が発表した国別の来阪者数をまとめたものです。この数値には「ビジネス客」が含まれており純然たる観光客数では無いことに注意が必要です。また、2018年度は台風による関空閉鎖の影響を受けた値で異常値といえます。2019年度上期は本来のペースにもています。ただ、外交問題の影響を受けた韓国は7月以降の下期に影響を及ぼすと予想されます。
国別実績を見てドイツからの来阪者の少なさに驚きました。世界最大のアウトバンド市場である欧州のなかで最大の市場はドイツですが、2019年上期に大阪を訪れたドイツ人は4万人しかいません。欧州からのアウトバンドを取り込む為には関空の欧州路線を強化する、来訪者を収容出来る高級ホテルの整備、特にドイツ語での情報発信強化と現地プロモーションの強化などが必要です。
空港整備や欧州路線の強化。IRなど強力な集客施設の整備、空港アクセスなど一連の課題や施策は切れ目無く繋がっています。アジア市場の取り込みは今まで通り拡大させつつ、プラスαで欧州の取り込みをはかる。豊富な世界遺産を有し、西洋人にオリエンタルなイメージを与える京都・奈良などと連携することが出来る、大阪は世界最強のインバウンド都市を目指せるポジションに立っています。
(単位:万人) | 来阪観光客数 2018年 (関空閉鎖の影響あり) | |||||
全国 | 前年比 | 大阪 | 前年比 | 東京 | 前年 | |
韓国 | 753.9 | 106% | 239 | 99% | 148.8 | 97% |
中国 | 838 | 114% | 455.1 | 113% | 466.2 | 111% |
台湾 | 475.7 | 104% | 122.3 | 87% | 149.7 | 101% |
香港 | 220.8 | 99% | 71.7 | 97% | 72.3 | 99% |
タイ | 113.2 | 115% | 32.5 | 109% | 59 | 107% |
シンガポール | 43.7 | 108% | 15.8 | 126% | 28.7 | 104% |
マレーシア | 46.8 | 107% | 22.5 | 105% | 20.7 | 118% |
インドネシア | 39.7 | 113% | 18.7 | 119% | 33.5 | 118% |
フィリピン | 50.4 | 119% | 16.9 | 107% | 29.3 | 124% |
ベトナム | 38.9 | 126% | 15.7 | 134% | 25 | 124% |
インド | 15.4 | 115% | 3.9 | 106% | 10.1 | 125% |
イギリス | 33.4 | 108% | 6.1 | 107% | 31.7 | 108% |
フランス | 30.5 | 114% | 12.6 | 117% | 26.7 | 115% |
ドイツ | 21.5 | 110% | 7.6 | 121% | 17.6 | 110% |
アメリカ | 152.6 | 111% | 41.5 | 116% | 119.1 | 113% |
カナダ | 33.1 | 108% | 12.6 | 122% | 27.8 | 112% |
オーストラリア | 55.2 | 112% | 24.3 | 114% | 47.3 | 111% |
その他 | 156.2 | 112% | 23.8 | 46% | 109.5 | 102% |
合計 | 3119.2 | 109% | 1142.4 | 103% | 1422.9 | 107% |
(単位:万人) | 来阪観光客数 2019年(1~6月) | |||||
全国 | 前年比 | 大阪 | 前年比 | 東京 | 前年 | |
韓国 | 386.3 | 96% | 114.9 | 85% | 75 | 95% |
中国 | 453.2 | 112% | 258.4 | 119% | 239 | 108% |
台湾 | 248.1 | 99% | 64.6 | 95% | 73.4 | 94% |
香港 | 109.8 | 99% | 35.9 | 95% | 35.4 | 99% |
タイ | 68.4 | 113% | 19.3 | 105% | 34.2 | 105% |
シンガポール | 21.4 | 107% | 7.4 | 102% | 13.7 | 100% |
マレーシア | 23.8 | 101% | 9.4 | 75% | 11.4 | 123% |
インドネシア | 21.6 | 101% | 10.7 | 106% | 18 | 102% |
フィリピン | 29.5 | 107% | 10.3 | 110% | 15.8 | 98% |
ベトナム | 25.3 | 130% | 10.7 | 152% | 15.6 | 134% |
インド | 9.3 | 115% | 2.3 | 105% | 7.2 | 133% |
イギリス | 18.6 | 110% | 6.2 | 205% | 15.9 | 100% |
フランス | 16 | 107% | 6.5 | 117% | 14.2 | 109% |
ドイツ | 11.8 | 112% | 4 | 111% | 9.6 | 111% |
アメリカ | 87.5 | 113% | 24.4 | 118% | 66.7 | 112% |
カナダ | 18.4 | 111% | 7.1 | 126% | 14.9 | 108% |
オーストラリア | 32.7 | 111% | 14.4 | 117% | 27.4 | 108% |
その他 | 81.7 | 110% | 16.8 | 144% | 63.8 | 124% |
合計 | 1663.4 | 105% | 623.3 | 106% | 751.1 | 106% |
澪標さん>
ご指摘ありがとうございます。本文を訂正しましたのでご確認ください。
韓国と中国以外の観光客を誘致する努力がもっともっと必要です。
>2019年上期に大阪を訪れたドイツ人は4千人
4万人では?
ドイツ人観光客を関西に呼ぶには、徳島県鳴門市のドイツ館がうってつけです。第一次大戦で捕虜になったドイツ兵がアジアで初めてベートーヴェンの「第九」を全曲演奏したのを記念しています。
http://doitsukan.com/what.html
周辺には収容所跡(ドイツ村公園)やベートーヴェン像があるし、淡路島、鳴門海峡、お遍路さん、大塚美術館、祖谷渓などヨーロッパ人が喜びそうなスポットがたくさんあります。その玄関はやはり大阪だと思います。