出典:Wikipedia
大分県は2020年3月4日に、早ければ2023年に大分空港と大分市内を結ぶホーバークラフト航路を開設すると発表しました。高速道路経由で約1時間かかる距離を、海上を通ることで約25分で結ぶ計画です。同県では大分空港が国東市に移転した1971年にホーバークラフトが就航しましたが、その後の利用者減少やメンテナンス費用の上昇などから2009年秋に運航を終了しました。しかし、インバウンド需要を受け空港の利用者数は増加を続けており、空港アクセスの改善が急務となりました。県は2018年度から大分空港アクセスの改善について調査を進め、検討の結果、再びホバークラフトが復活する事となりました。
【出展元】
→大分空港への海上アクセスの導入について
【出展元】
→大分空港>マップ&各地へのアクセス
大分空港と大分市街は別府湾を挟む位置にあります。陸路は湾を大きく迂回する事になる為、直線で湾を横断する海上アクセスの方が時間短縮を期待できます。また用地取得や構造物の整備は、鉄道などの陸上交通では大規模になり、海上アクセスの方が事業費が安価で導入期間も短くなります。その為、船舶による「海上アクセス」が最適であるとされました。
続いて「海上アクセス」について調査検討が行われ、高速船2案、ホバークラフト1案の計3案に実現可能性があるとされました。さらに検討の結果、船型については、時間短縮効果、空港側の接続などの利便性、発着地整備費、運航開始までの期間といった理由から、既存施設を利用できるホバークラフトが最善であると判断されました。高速船が港湾整備を含めて最大約200億円かかるのに対し、ホーバークラフトは同85億円と試算されました。
運航スキームについては、鉄道事業の様な「上下分離方式」で収支確保が可能とされました。県が発着地などの施設を整備し、船舶を購入し民間の運航事業者に貸与し、運航事業者は運航の人件費、燃料費、船舶修繕費などを負担します。県は貸付料と施設使用料について必要な減免を行ないますが民間運航事業者の赤字は補てんは行わない方針です。
出展:https://www.hovertravel.co.uk/
海上アクセスの利用者数は、年間30万~40万人台を想定。ホバークラフトの希少性を生かした観光利用も取り込む方針です。運航する船舶は旅客定員80名程度のホバークラフトで、常用2隻と予備1隻の3隻体制。運航ルートは海上運航距離約29km、運航所要時間は最速で約25分を想定しています。発着地の位置については、大分市側は西新地または西大分を候補に調整し、空港側は既存の旧ホバークラフト航走路を活用します。運航事業者候補となったのは、全国でタクシーを中心に事業を展開している第一交通産業です。今回、ホーバークラフトの運航事業者として名乗りを上げたのは同社のみでした。
出典:Wikipedia ①推進・操向用のプロペラ。②空気の流れ。③浮上用のファン。④スカート。
ホバークラフト(ホーバークラフト)はエアクッションビークル(ACV)とも呼ばれ、高圧の空気で水面から浮上して高速航行する、浮いて走る乗り物です。地上でも走れるが、既存の交通との混合は問題が多いので、もっぱら船舶として水上で運用されています。かつては瀬戸内海、伊勢湾、佐渡島航路などで運航されていましたが、すでに国内でホーバークラフト航路はなく、唯一のメーカーだった三井造船(現・三井E&S造船)も生産を取りやめています。
出展:https://www.hovertravel.co.uk/
世界的にもホバークラフト航路は珍しくなっており、通年の定期航路はイギリス本土とワイト島を結ぶホバートラベル社が、同社によると世界でも唯一との事です。旅客輸送用ホバークラフトを建造できる造船会社も少なく、ホバートラベルに納入したグリフォン・ホバーワーク社(イギリス)がほぼ唯一と思われます。騒音や燃費の悪さ、ランニングコストの高さなどから一旦は国内から姿を消したホバークラフト。今回の大分での復活劇が成功を収めるかどうか?これから注目を集めそうです。
めちゃめちゃ面白い話ですね!是非遠回りしてでも体験してみたいものです。2003年頃、出張の折、一度だけ空港で見かけましたが、陸路をごそごそと這い進んでいく光景は面白く不思議な乗り物でした。ただ騒音が結構大きかったですが。当時、大分市内まで運賃が4000円前後、但し陸路でバスだと所要時間がかかることがネックで、且つアップダウンもあり、空港まで遠い・不便という印象だけが残りました。
今後、これに乗りに行くニーズも大きいのではないでしょうか。楽しみにしています。